結論からお伝えします。部下への指示が思うように伝わらない最大の原因は、「〇〇しないで」という否定形の言葉を使っていることかもしれません。 同じ内容でも「〇〇しよう」という肯定形に変えるだけで、相手の行動は驚くほど変わります。
あるリーダーの悩み
以前、私の研修にこんな相談を持ち込んだ営業部長のAさんがいました。
「先生、うちの若手がどうも頼りなくて。何度『ミスしないように気をつけろ』『お客様を怒らせるなよ』と言っても、同じような失敗を繰り返すんです。やる気がないんでしょうか」
話を聞いていて、私はピンときました。Aさんは管理職としての素晴らしい実績と能力をお持ちの方です。ただ、そんなAさんにも指示の出し方にもったいない癖があったのです。
それが、「〇〇しないで」という否定形の言葉でした。

なぜ「しないで」は伝わらないのか
人間の脳は、否定形を処理するのが苦手という特性を持っています。
「うめぼしをを想像しないでください」と言われても頭の中にはうめぼしの画像・映像が浮かんでしまい、中には唾液がじわっと広がった方もいるのではないでしょうか?
このように人は先に耳に入った言葉を頭でイメージし、後から「しないで」という否定語を加えられても、それを打ち消す事はできない。
更には脳内に浮かんだ画像・映像が体の反応(唾液がじわっと広がる)を引き起こすという特性を持っています。
つまり「ミスしないで」と言われた部下の頭の中には、皮肉なことに「ミス」のイメージが浮かんでしまうのです。

これは私自身、苦い経験があります。
経営する整骨院で新しく入ってきたスタッフに包帯の巻き方を指導していた時です。
当時、私はこんな風に伝えていたんです。
「巻くときには絶対にたるみをつくるなよ。」
結果はご想像り、あちこちにたるみのある巻き方になっていました。丁寧に巻き方を教えていたつもりなのに、当時の私にはなぜそうなってしまうのか全くわかりませんでした。
しかし、ペップトークを学んでからやっと、自分の伝え方にも要因があったことを理解しました。
肯定形に変えるだけで景色が変わる
冒頭のAさんに、私はこうお伝えしました。
「明日から、指示の言葉を一つだけ変えてみませんか。『ミスしないように』ではなく『例えばダブルチェックをして、確実に進めよう』と、してほしい事をストレートに伝えてみてください」
半信半疑だったAさんでしたが、2週間後に再会したとき、こんな報告をくださいました。
「驚きました。若手が自分から『部長、ここチェックお願いします』と来るようになったんです。最初はいくつか目についたのですが、その都度指摘をしたらどんどんミスが減ったんです。更には今まで私の前では小さくなっていた彼が、生き生きと提案までしてくれるようになって」
変えたのは、ほんの少しの言葉の使い方だけ。それだけで、部下の行動がここまで変わるのです。
もう少し例を並べてみましょう。
- 「会議に遅刻しないで」→「5分前に集合しよう」
- 「ミスしないように気をつけて」→「ダブルチェックをして、確実に進めよう」
- 「お客様を怒らせないでくれよ」→「お客様に喜んでもらえる対応をしよう」
同じことを伝えているはずなのに、受け取る印象がまったく変わる。
それは肯定形の言葉は、具体的な行動イメージを相手の頭の中に描かせるからなのです。
「とらえかた変換」を習慣にする
ペップトークでは、これを「とらえかた変換」と呼んでいます。同じしてほしい事でも、どう言葉にするかで相手の意識が変わるのです。
明日から部下に指示を出す前に、心の中で一度このように問いかけてみて下さい。
「私は今、してほしくないこと+否定形で伝えようとしていないか?」
「してほしいことを、肯定形で言い換えられないか?」
言葉はリーダーの最大の道具
リーダーが部下に与えられるものは、評価だけではありません。毎日かける言葉こそが、部下の成長と組織の未来をつくっています。
「しないで」を「しよう」に変える。
たったこれだけのことですが、続けていけば必ず変化が訪れます。
あなたの言葉には、人を動かす力があります。今日から、その力を前向きな方向に使ってみませんか。きっと、あなたのチームは、Aさんの職場のように見違える姿を見せてくれるはずです。
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